システム開発の見積書を正しく理解し、成功の第一歩を踏み出すために

システム開発プロジェクトを開始する際、見積書は非常に重要なドキュメントです。しかし、初めてシステム開発を依頼する場合、「見積書には何が書かれているのか」「どう読み解けばよいのか」が分からないことも多いでしょう。この記事では、見積書の基本構造、注意すべきポイント、そして適切な見積もりを得るためのコツについて詳しく解説します。

1. システム開発の見積書とは?

見積書とは、システム開発にかかる費用や工数を詳細に記載した文書であり、主に以下の要素が含まれます。

主な項目

項目内容
プロジェクト概要開発するシステムの目的、機能、対象範囲などの要約。
工数の内訳開発プロセスごとの作業時間(要件定義、設計、開発、テストなど)と担当者の役割。
単価・人件費開発に関与するエンジニアやPMの時間単価。
合計費用人件費、インフラ費用、ツールライセンス費用などを合計した総額。
備考見積もり条件や範囲外の作業の取り扱い、追加費用の条件など。
開発会社経営:楠原
開発会社経営:楠原

見積書の中に、しっかりと概要や定義・前提など不明な点についても考慮が含められていると良いです。値段を展開するだけの場所ではなく、次以降の工程で必要な情報が考慮されていると安心できます。


2. 見積書作成時に使われる手法

システム開発の見積もりには、以下のような手法が用いられます。

2.1 ファンクションポイント法

  • 概要: ソフトウェアの機能を定量化し、それに基づいて工数や費用を算出する手法。
  • 特徴: 客観的な評価が可能ですが、適切なスキルを持つエンジニアが必要です。

2.2 ココモモデル (COCOMO Model)

  • 概要: 開発規模を入力し、数学モデルで必要な工数と費用を見積もる方法。
  • 特徴: 過去のデータに基づいた精度の高い見積もりが可能ですが、初期設定に手間がかかります。

2.3 類推見積もり

  • 概要: 過去の類似プロジェクトのデータを参考に費用を算出。
  • 特徴: 初期段階のざっくりした見積もりに有効。
開発会社経営:楠原
開発会社経営:楠原

あくまで、私の見積書の作成手法ですが、「1ヶ月の人月単価 * 必要人員 * 想定プロジェクト期間」のような形で、準委任契約・SES契約をベースにおいた形で、請負開発でも見積書を書いていくことが多いです。もし、ざっくりとした期間だけでは算出が難しい場合、より細かな粒度、例えば「画面ごと」「機能ごと」「ユースケースごと」などさらに細かい単位で簡単な要件定義を想定しながら作成することが多いです。


3. 見積書を読む際の注意点

3.1 範囲外の作業に注意

  • 「この費用に何が含まれていないのか」を確認することが重要です。例えば、保守運用費やサーバー費用が別途発生する場合があります。
  • 開発スコープについても、見積書にのっていないものは追加対応になるのか、どこまで同じ金額でやってもらえるのか等、確認をしておいたほうが無難です。

3.2 工数の妥当性をチェック

  • 各工程の工数が明確に記載されているかを確認し、依頼内容に対して適切かどうかを判断しましょう。
  • また、工数にかかっている単価が相場通りかも検証すべきです。
  • 相見積もりによって検証できる部分は確認したいです。

3.3 条件付き費用に注目

  • 見積もりに含まれる条件(例: 仕様変更、追加作業)がどのように扱われるかを確認してください。
  • 見積書に入っていない場合は、個別でもいいので必ず質問してください。
開発会社経営:楠原
開発会社経営:楠原

開発の内容・アウトラインについては各社大きく違ってこないことが多いのですが、保守運用や固定費の請求分について、あい見積もりを取るなどして妥当性を検証し、よりベターな契約で進められる会社を選ぶのが良いです。例えば、同じAWSでサーバーを構築しているのに、A社は月10万円の固定費、他方でB社は月5万円の固定費となっているなど、開発が完了して以降の対応に大きな差が出ることが多いです。なるべく、見積もりに含まれているものについてはすべてテーブルに乗せてもらうようにし、疑問点は解消していったほうがよいです。


4. 見積書の具体例

以下は、システム開発見積書の一例です。

簡易バージョン

項目詳細費用
要件定義フェーズヒアリング、仕様策定¥1,000,000
基本設計フェーズシステム設計書作成¥1,500,000
詳細設計・開発フェーズコーディング、ユニットテスト¥4,000,000
テストフェーズ総合テスト、バグ修正¥1,500,000
合計¥8,000,000

機能ごとバージョン

項目詳細費用
要件定義・UI/UXデザインヒアリング、仕様策定およびUI/UXデザイン作成¥1,000,000
1. 開発 – 認証画面バックエンド+フロントエンドの開発および外部モジュールとの接続¥400,000
2. 開発 – ユーザー一覧画面バックエンド+フロントエンドの開発¥600,000
3. …
4. …
テストフェーズ総合テスト、バグ修正¥1,500,000
合計¥8,000,000

5. 適切な見積もりを得るためのコツ

開発会社経営:楠原
開発会社経営:楠原

よく、お打ち合わせ前に「ひとまず概算見積もりがほしいです」とご依頼いただくこともございますが、要件が固まっていない段階でだした見積もりのまま続投することは基本的に厳しいです。どこかで必ず無理がでてきますので、なるべく早くにどこかの会社とお打ち合わせをしていただき、ざっくりとした初期要件をお作りいただけるとより正確な見積もりを引き出せるかと思います。もしくは、御社の開発知見のある方に、箇条書きでもいいので必要な機能一覧をお出しいただけると非常にスムーズです。

  1. 具体的な要件を提示する
    • 開発したいシステムの仕様やゴールをできるだけ詳細に説明する。
    • 箇条書きレベルでもいいので、機能一覧を作って見積もり先に渡してあげる。
    • 何の機能が必要かもわからなければ、一旦、開発会社や開発知見のある人脈に要件の整理を依頼してみる。
  2. 複数社に依頼する
    • 複数の開発会社に見積もりを依頼し、内容を比較する。
    • A社ではなかったが、B社では含まれていたことなどがあり、見積もりを通じて要件の整理が可能。
    • 他社見積もりの不明点などを相互に質問することで、より細かな部分まで考えを巡らすことができる。
  3. コミュニケーションを密に取る
    • 見積書の不明点を事前に確認し、誤解を防ぐ。
    • なるべく、わかっている範囲までの情報をすべて棚卸しし、見積もりの作成に活かしてもらう。

まとめ

システム開発の見積書は、プロジェクトのコストを左右する重要な書類です。その内容を正確に把握し、適切に交渉することで、無駄な費用を抑えることができます。ぜひ本記事のポイントを参考に、開発プロジェクトを成功に導いてください。

開発会社経営:楠原
開発会社経営:楠原

見積書にのっていない情報まで、しっかり確認していきましょう!見積書をもらって終わりではなく、見積書ベースのコミュニケーションを取り、成果物のイメージをより詳細にしていいましょう。


必要に応じて、さらに具体的な見積書例や質問に対応しますので、お気軽にお知らせください。

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